映画:ボーダレス ぼくの船の国境線

厳しい中東の現実を寓話的に描く瑞々しさ溢れるイラン映画の傑作

国境沿いの立入禁止区域に放置された船を根城にし、魚や貝を獲ってひとりたくましく生活する少年。孤独だが静かな船での暮らしに、突然国境の反対側から少年と同じくらいの年の少年兵が乗り込んでくる。「船のこちら側は自分の陣地」とばかりに甲板にロープを張り、勝手に船の備品を持ち出していくこの小さな侵入者に少年は怒りの声をあげるが、言葉が通じず、ときに銃を持ちだす少年兵には何を言っても伝わらない。そんなある日、船の外では爆撃音が鳴り響き、やがて船のなかから赤ん坊の鳴き声が聞こえてくる。赤ん坊を抱え震える少年兵を見つける少年。この日を境に、対立するふたりの間に不思議な連帯感が生まれていく。そんななか船にはまた新たな侵入者が現れて……。
舞台となる船が浮かぶのは、イランとイラクの国境付近の川。それぞれペルシャ語、アラビア語、英語を話す登場人物たちは、最初から最後まで言葉によるコミュニケーションをとることができない。1980年代のイラン・イラク戦争後、今もなお紛争が続く中東の厳しい現実がリアルに描かれる一方で、時代設定や彼らの国籍、年齢について、映画は多くを語ろうとしない。異なる世界を生きる人々の言葉を越えた交流は、まるで現代の寓話のように私たちの心に強く訴えかける。

子供たちの繊細な演技と豊かな表情が織りなす感動作

本作は、イラン国内で50本以上の映画やテレビシリーズで助監督を務めてきたアミルホセイン・アスガリの待望の監督デビュー作。デビュー作ながら、プロの役者でなく地元に住む素人の子供たちを起用することで、彼らの豊かな表情と身振りを見事に描きだしてみせた。監督アドバイザーにアボルファズル・ジャリリ(『少年と砂漠のカフェ』)が名を連ねる。これまで、アッバス・キアロスタミ(『友だちのうちはどこ?』)やアミール・ナデリ(『駆ける少年』)など、子どもを主人公に据えた数々の名作映画を生み出してきたイラン映画史に、またひとつ、心震える傑作が誕生した。昨年の東京国際映画祭でプレミア上映され、観客の深い感動と涙を誘い「アジアの未来」部門作品賞を受賞。イラン映画の新たな才能として、いまもっとも注目される監督である。

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